亡くなった後の手続きを事前に第三者に委任する契約のことです。
通常、法的な相続手続きは遺言書や相続法で対応しますが、葬儀・納骨・公共料金の解約などの手続きは対象外です。
そこで、死後事務委任契約を活用し、信頼できる人や専門家に事務処理を依頼することができます。
死後事務委任契約で依頼できる業務には、以下のようなものがあります。
□ 葬儀・火葬・納骨の手配
□ 入院費・公共料金・家賃の支払い手続き
□ 賃貸物件の退去手続き
□ 遺品整理・不用品処分
□ 関係各所への死亡届提出
□ SNSやサブスクなどの解約
特に、身寄りがない方や、家族と疎遠な方にとって死後の事務処理をスムーズに進めるために重要な契約となります。
死後事務委任契約が必要な場合は
◆以下のような方にとって、死後事務委任契約は重要な役割を果たします。
・ 身寄りがいない単身者(親族がいないため、様々な手続きを行う人がいない)。
・ 家族に迷惑をかけたくない方(遠方の親族に負担をかけたくない、忙しい家族
に大変な思いをさせたくない)。
・ 相続人がいても信頼関係が薄い場合(親族と疎遠であり、対応してくれない可
能性がある場合)。
死後事務委任契約契約を結ぶ際の注意点
□ 信頼できる相手を選びましょう
⇒弁護士・司法書士などの専門家、また、法人が望ましい。
□ 契約内容を明確にする
⇒何を依頼するか、何をしてくれるかを詳細に決めておくことが必要。
□ 死後事務の実行が確実にされるように保証を確認する
⇒契約書の作成だけでなく、実際に手続きがスムーズに行われるかどうかを確認することが重要です。
※公正証書で法的な約束を結ぶことを推奨しています。
死後事務委任契約で依頼できること
1 ご遺体の引き取り
・死後事務委任契約では、ご遺体の引き取りを第三者に依頼することが可能です。通常、この役割は親族が担いますが、親族が疎遠などで、引き取りを拒否されることや時間がかかってしまうケースもあります。こうした場合、場合によっては無縁仏となり、自治体がご遺体を引き取ることになりますが、死後事務委任契約を締結しておけば、その心配はありません。
・病院や施設でお亡くなりになった後、ご遺体のお引き取りをして葬儀・納骨を専門家の手で責任を持って執り行うことができます。身元引受人契約と合わせてのご契約を推奨します。
2 葬儀や納骨の手続き
・葬儀場の手配や火葬の申請
・納骨や永代供養の手続きを委任
契約者様の希望に沿った方法で、葬儀や埋葬が行われるため、安心して最期を迎えられます。
3 親族や知人への連絡
死後、親族や知人への連絡も受任者に依頼できます。
近年ではSNSを通じた告知も増えており、そういった要望にも応じることが可能です。
4 家賃や医療費などの精算
死後、発生していた家賃や介護費用、医療費などの精算も依頼できます。これにより、親族に未払いの請求が行くのを防ぎ、相続トラブルを回避できます。
5 行政手続き
亡くなった後には、健康保険の資格喪失届や年金の停止申請など、さまざまな行政手続きが必要です。こうした手続きを生前に依頼しておくことで、死後の事務がスムーズに進行します。
6 部屋の清掃や家財の処分
居住していた部屋や家財の処分も死後事務委任契約で依頼できます。ただし、相続に関わる高価な財産の処分は避けるべきであり、契約時に処分範囲を明確にしておくことが重要です。
7 デジタルデータの解約と処分
有料のWebコンテンツやネット回線も死後事務委任契約で依頼できます。あらかじめアカウントのIDやパスワードを控えて、スムーズにデジタルデータの解約や削除を行えるよう準備しておくことも大切です。
8 ペットの引き継ぎ先の指定
ペットを飼っている方は、死後の引き継ぎ先を指定することもできます。信頼できる人や団体にペットの世話を依頼することで、安心して老後を過ごせます。
死後事務委任契約で依頼できないこと
・相続に関する手続きはできません。
・生きている間の諸々の手続きは委任できません。
◆遺言書、成年後見人、相続税、相続トラブル、公正証書作成についてなどを含めた法律相談は、トラスト弁護士法人がお受けしております。
どんな小さなことでも、躊躇せずにご相談ください。